我が子を高学歴に育てる親の「心構え」とは?(幼児・小学生編)

子どもを高学歴に育てるための親の心がけをテーマに、2回に分けてお話しします。今回は前編として、幼児期〜小学生の子どもの育児や家庭教育のポイントを見ていきましょう。

現代の子育ての主流「ほめて育てる」は本当に正しいのか

今は「ほめて育てる」「その子のありのままを認める」育児が正しく、昭和の子育て(根性論やスパルタ式の教育)を否定する向きがあります。1990年代以降、発達心理学や幼児教育の専門家が「ほめ育て」の効果を論じ、一般向けの育児本や教育書でも「ほめ言葉のシャワーをたくさん浴びせたほうが、良い子に育つ、才能が伸びる」と推奨されてきました。しかし、ほめ育ては本当に育児の正解なのでしょうか?

ほめられて育った子は自己肯定感が低い

最近になって「ほめて育てられた子は自己肯定感が育つどころか、逆に低い傾向がある」というデータが複数上がってきています。
たとえば、日本・米国・中国・韓国の高校生を対象とした意識調査(日本青少年研究所)があります。「自分はダメな人間だ」と思うかという問いに「よく当てはまる」と答えた日本の高校生は、1980年には12.9%だったものが「ほめ育て」が主流となった2014年には25.5%と倍増しています。「まあそう思う」も含めると7割の高校生が自分に自信がありません。
不登校、引きこもり自立支援協会も、むやみにほめて育てることで、かえって子どもの心を壊してしまうことがあると危険性を訴えています。
フロイトやユングと並ぶ心理学のアルフレッド・アドラーも、ほめることの問題点を注意喚起しています。ほめることで評価を気にして自立心を失ったり、ほめられなければ何もしない指示待ち人間になるリスクなどがあり、「ほめることよりも勇気づけが大事だ」と彼は述べています。

すぐに諦める、キレる、挫折する現代っ子

叱られるとキレて自傷他害に走ったり、困難があると向き合わずに逃げてしまったり、挫折して引きこもったりなど精神的な脆さをもつ子が増えていると言われますが、これも親が厳しい態度で叱らない、我慢させないで自由にさせることの弊害ではないかと私は思っています。
本人のよくない点に目を瞑り、何でもかんでもほめて・認めてをしていれば、子どもは反省できません。「これで良いのだ」「自分のわがままが通る」と思い込んでしまい、やがては世の中や親をなめてかかり、コントロールの効かない子になってしまうでしょう。

親に必要なのは、子どもに我慢させきる強さ

今の子育てに一番欠けているのは「我慢」です。子どもがわがままを言ったとき、困難から逃げようとしたときに、親が「それはダメ」とはっきり言葉や態度で示し、子どもが拗ねても泣いても頑として動かないで、最後まで我慢させきることができるかどうか。それが子育てでは分かれ道になります。

医学部合格する子の親は我慢させきる覚悟がある

私の経験から言えることですが、医学部合格する子はみんな我慢強さがあり、親も覚悟をもって子育てしています。遊びたい盛りの子どもが「塾をやめたい」と言い出すのは日常茶飯事ですが、子どもを医学部に入れるような親は「塾に行きなさい。やめることは私が認めない」というふうに絶対にブレません。
逆に、「じゃあ、少し休んで行きたくなったら行こう」とか「別の塾に行ってみる?」など言う親は、子どもに主導権を握られているので、いずれ子どもを制御できなくなっていきます。
親の提案に対して、子どもは「別の塾なら頑張る」と言うでしょう。しかし、結局は頑張れないケースが多いのです。塾を転々としていれば学習の一貫性がなくなりますから当然、学力は伸びません。そうなったときに親が「しまった!」と思って厳しく指導してくれる塾に連れて行こうとしても、すでに子どもは親の言うことを聞かなくなっています。中途半端な学習を続けることになり、医学部合格は遠い夢になってしまう……というパターンを私は多く見聞きしてきました。
心の強い子、常識をわきまえた子、目標に向かって努力できる子に育つためには、親の覚悟が不可欠なのです。

子どもに我慢させきるには、親の我慢が重要

子どもに我慢強さを教えるには、親も我慢強くある必要があります。
たとえば、子どもが駄々をこねたとき、お菓子やおもちゃを買い与えてご機嫌を取るのは簡単です。親も手っ取り早く子どもを静かにさせられるので楽です。最近はスマホに幼児の子守りをさせている親も見受けますが、私はとても心配になります。
物で機嫌を取ることが当たり前になると、子どもは何にでもご褒美を求めるようになり、問題が起こってきます。
「学校のテストで100点取ったらゲーム買ってね」と約束して、勉強する場合、その子はゲームのために勉強することになります。将来の自分の進路のことなど頭にはなく、目的のゲームを手に入れれば勉強のモチベーションは切れます。こんな途切れ途切れのモチベーションや低い目標では、医学部合格など手が届くはずもありません。
子どもが駄々をこねたときこそ、親の我慢が必要なのです。「君のわがままは通らないよ」「親はそんなに甘くない」ということをしっかり教えてください。親が動じないと分かれば、子どもは自分で自分の気持ちを切り替えることを覚えていきます。

小学校までは親の意志が9割、子は1割で物事を決める

子どもが小学校までは、物事の決定権や判断は親がすべきです。「子どもの自主性を重んじて」は、この年代には無理です。子どもは目の前のことしか見えてなく、将来のことまで見通して選ぶことができないからです。
スーパーで好きなお菓子を選ぶなら、子どもの好きにさせれば良いでしょうが、塾に行くか否か、どの塾に行くかなど将来を左右する大事な選択は、親が熟考して決めるべきです。

習い事をたくさんさせるのは本当に子どものため?

 次に、習い事をさせるか、させるなら何がいいかという問題です。今の子どもたちを見ていると、毎日習い事があって、1日に2つの習い事を掛け持ちしている子もいて、大変そうだなと感じます。
 子どもを習い事に通わせていると、親は安心です。子どもの才能を伸ばしてあげている安心感があるからです。また、子どもが習い事をしている間は親が自分の時間を持てるというメリットもあります。しかし、あれもこれも通わせることは子どものためにならないと私は考えます。

習い事が多すぎてどれも中途半端になりがち

 「いろいろな習い事を経験させて、その中から得意なものを見つける」という考え方を否定はしませんが、将来子どもを医者にしたいなど目標が決まっている場合は、あまり習い事が多いのは考えものです。子どもが忙しすぎて余裕がなく、どれも中途半端になりやすいからです。
 習い事の幅を広げるよりは、学力を伸ばす塾と五感を鍛える体操教室、語学力をつける英語塾の3つだけにするなど、必要なものに絞って1つ1つに集中できるようにしてあげてほしいと思います。

五感を使った遊びや外遊びをいっぱいさせよう

 私の子どもは3人とも医学部に入りましたが、私が彼らの幼少期に育児で心掛けていたことは、メリハリです。勉強時間は短い時間で集中させ、それ以外はたくさん遊ばせるようにしました。
小さい子にとって遊びは脳の発達にとって欠かせないものです。子どもは遊びを通して外界に興味を持ったり、手や体を器用に使えるようになったり、社会性を身につけたりしていきます。
特に外遊びをおすすめします。昆虫や小動物と触れ合ったり、季節ごとの草花を観察したり、天気の変化を感じたり、かけっこや木登りしたりといったことは、小さいうちでないとなかなかゆっくり体験できません。こうした生活経験は、大きくなって理科や数学などを学ぶときに役立ちます。体験と結びついた理解は、理屈で理解するより深い理解になるからです。

おもちゃは買う必要なし 親子で遊びや道具を作ろう

 子どもにおもちゃやゲームを買い与える必要はありません。割り箸やストローやビニール袋など身近にあるものを使って、親と一緒におもちゃを作ればOK。発想力や手先の器用さが育ちます。
 遊びそのものを発明するのも子どもたちは得意です。自分でルールを作って遊んでみて、納得がいかなければ改良していったりもします。PDCAサイクル(計画、実行、評価、改善)を遊びの中で学んでいくのです。

学力だけが全てではない 情操を育てよう

 高学歴の子にしたいからといって、学力偏重の教育はおすすめしません。IQ(学力)とEQ(心の知能指数)のバランスが取れている人ほど、学力的にも人間的にも成功しやすいことが様々な研究から分かっています。現代の教育はIQ偏重になりがちなので、あえてEQを育てることを意識しましょう。EQを育てるには、幼児期に愛情を注ぐこと、遊びなどの体験をさせることが有効です。

食育は大事 手をかけてお金をかけないのがコツ

 子どもが親の愛情を感じる最たる場面が、毎日の食事です。栄養バランスやカロリー、彩り、味付け、食感、季節感などを考えてつくった食事は、子どもの体はもちろん心の栄養になります。
 是非、手作りで美味しいご飯を作ってあげてください。市販のだし醤油やドレッシングを買うより、小瓶に醤油と昆布を入れてだし醤油を作ったり、酢と塩と砂糖を混ぜて自家製ドレッシングを作ったりすれば、お金を節約しながら食品添加物も避けられて健康的です。「手をかけてお金をかけない」のが食育のコツです。

まとめ

 子どもが高学歴に育つかどうかは、子どもの生れもった資質もゼロではありませんが、9割は親の育て方だと私は思っています。普通の子でも育て方次第で天才になりますし、逆に天才的な脳を持っていても、親の育て方が悪いと才能は開花できません。
 子育ては何が正解か分からないことも多く、親は迷うことも多いと思いますが、本記事が少しでも参考になれば嬉しいです。

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