3きょうだい全員が医学部合格! 塾長が語る“子が伸びる”母子関係(後編)
今回は子育ての話の続編として、これからの教育の在り方と家庭教育についてお話をします。子どもの才能を見つけて伸ばすために、親はどうすればいいか。その一つのヒントになることを願って。
目次
一芸をもった“異才”を育てる教育へのシフト
ゆとり世代の教育が「みんな平等」を目指したのに対し、今はユニークな才能を持つ「異才」「天才」を育てる教育にシフトしてきています。これは日本財団と東京大学先端科学技術研究センターが共同で「異才発掘プロジェクト ROCKET」というプロジェクトを行っていることからも明らかです。今後はその子の能力に応じて個別に伸ばしていく教育がトレンドになっていくでしょう。
実は「できる子に個別教育をして才能を伸ばす」というのは、私が松原塾で昔からやってきたことそのものです。
一斉授業では子の才能に気づけない
今は学校教育でアクティブラーニング(グループ学習や調べ学習などの活動を取り入れた授業)が導入され始めていますが、まだまだ教師の話をみんなで聞く、講義スタイルの一斉授業が主流です。
教師が一方的に喋るだけの授業では、生徒は受け身の学び方になり、自分で考えることをしないので個性は伸ばしていけません。伸ばしていくどころか、教師が生徒の個性に気付くこと自体が難しいでしょう。オンライン授業が増えてきたことを考えると、教師が子どもを知ることや個別指導することのハードルはさらに上がっています。
まずは親が子どもの能力に気づき、早くから適切な教育を受けさせることが重要です。
親の目に映る子と客観的に見た子は違うもの
気をつけなければならないのは、親の期待と子どもの資質が違う場合があることです。「うちの子はよくできる」と言って、私の塾に子どもを連れてくる親御さんがいるのですが、「ごく一般的」というケースがあります。逆に、親御さんは気づいていないけれども明らかに他の子よりできる子もいます。
いずれの場合も専門家による客観的な判断をしてもらい、その子に合った教育を受けさせることが肝心です。
普通の学力の子でも的確な指導を継続的に行えば、難関大学や医学部合格レベルまで伸びることは可能です。もともとの学力の高い子は「自分はできる」と気が緩んでモチベーションが切れがちですが、適切な指導をすることでやる気を引き出し、更なる高みを目指せます。
幼児教育は子どもの才能発見に有効
専門家の客観的な判断を受けるうえで、幼児教育は役に立ちます。多くの子どもを見てきた立場の人なら、他の子との違いやその子の向き不向きを見つけてくれるでしょう。
私も開塾から20年以上たくさんの子どもを見てきましたが、才能を見抜く目が鍛えられました。本人の学習態度や解いている様子を1~2回見れば、「この子はできる」とか「生活習慣から作ってあげる必要がある」というのが分かります。
当塾から医学部合格していく子たちは、ほとんどが幼児や小学校低学年から入塾して、オーダーメイドの教育を受けてきた子たちです。
子育てにギブアップする親が増えている!?
昔から子どもをコントロールできない親というのが一定数いましたが、最近は子育てにギブアップする親が増えている気がして、私は心配しています。前編でも言いましたが、スマホ依存の子どもが増えていて、その親子関係はしばしば「子が主で、親が従」。
その親の言い分としては「スマホやタブレット端末を取り上げると子どもが暴れたり、うつっぽくなるので渡すしかない」「そもそも学校がオンライン学習だといって端末を与えるからいけない。持ち帰らせないでくれればいいのに」といった他責が多いように感じます。
私の塾にも子どもが言うことを聞かない、勉強しないと言うので相談に来るケースがあります。
口だけの親は子どもに甘く見られてしまう
こうしたケースに対しては、私はまず親御さんの教育から始めます。といっても、その子育てを責めることはしません。親御さんも迷いながら一生懸命に子育てをされてきたはずで、まさか自分の子どもがこうなるとは思っていなかったに違いないのです。
親御さんには「ルールは必ず守らせること」の大切さを説明し、「そのためには親御さん自身が言ったことは絶対守ってください」とアドバイスします。「スマホを取り上げるよ」と言うだけで実行しなければ、子どもは「どうせ口だけ」と思うようになり、「ごねれば無理が通る」と覚えてしまうからです。
親がブレないために、支柱として私がいる
このような話をすると、たいていの親御さんはハッとされます。ただ、頭では理解しても実際にやり通すのは骨が折れること。子どもが目の前で暴れれば、怖くなってスマホを渡してしまう気持ちも分からないではありません。
しかし、そこでブレないでほしいのです。親が折れてしまえば元の木阿弥。むしろ前より悪化してしまうことさえあるのです。
では、どうすればいいかというと、そのために私がいます。親御さんがブレそうになったとき、私が親御さんの話を聞いて、そのときに必要な対応を助言したり、勇気づけたり、私からお子さんに言い聞かせたりができます。
家庭の外にアドバイザーを見つけるといい
昔は親がブレそうになったり、親では子どもを言い聞かせられないとき、祖父母がよく力になってくれたものです。「おじいちゃんの雷が落ちたら終わり」というのが、私の子どもの頃も我が家の暗黙のルールとしてありました。それに、学校の先生も鬼教師と言われる生徒指導役がいるなど、厳しく指導されれました。
しかし、今は核家庭が大半で、親の味方になってくれる祖父母はいないのが普通です。学校の先生方も体罰を避けるあまり、優しい指導に終始しがちです。
この環境を変えることは難しいですが、塾や習い事、学童保育など外部に協力を求めることはできます。子育ての悩みや不安は積極的に打ち明けて、アドバイスをもらっても恥ずかしいことではありません。
親と一緒に闘う相棒でありたい
私は子どもたちへの指導と同じくらい、親御さんの相談を大事にしています。塾生の親御さんとはまめに連絡を取り、情報交換をかなり密にするので、最初は驚かれる親御さんもいるほどです。
なぜ、そんなに密にするかと言うと、親御さんと私の両方の眼で見ていかないと、お子さんを多面的に捉えることはできず、見過ごすことが出てきてしまうからです。
親御さんが気付く前に、塾での様子で「ちょっとこの頃おかしいな」と異変に気付くことも少なくありません。私が「最近の●●ちゃん、集中できないみたいですが、何かありました?」と尋ねたことで、親御さんが学校に問い合わせ、問題が見つかって早期解決できたこともありました。
子どもを多面的に見る、専門的な目で見てもらうということが、実はとても大事なのです。
まとめ
子育ては大変なこと、親の思い通りにならないことのほうが多いですが、親が逃げてしまったら子どもはどうしようもありません。親が潰れてしまわないために、私は親御さんを支え、一緒に子どもと向き合って闘っていきたいと思います。
松原塾は医学部専門予備校ですが、その本質はもっと深いところ、つまり「親子の関係づくり」や「子どもが頑張れるように親を導くこと」にあります。勉強ができる素地をしっかり固めることで、医学部レベルの難度の高い学問を吸収し、自分のものにしていくことができるのです。